アカウントをお持ちでないですか?
長崎大学ダイバーシティ推進センター 伊東 昌子 先生

DXA装置を用いた骨密度測定の正しい運用のために必要な技術と知識についてお話いたします。
特に、臨床の先生に認識されていないかも知れないと思われる項目、誤って認識されることも考えられる項目については、解説を詳しく述べたいと思います。
DXA法の利点は、①高い再現性(精度)、②低被曝量、③測定値が骨折リスクと相関、④操作性にあります。
一方、問題点は二次元計測に由来する限界であり、
①骨のサイズを反映する。つまりサイズの大きな骨では骨密度を過大評価し、小さい骨は過小評価する
②骨に重なる要素(大動脈石灰化など)を骨評価領域から除外できない
③海綿骨と皮質骨を分離した評価ができない
ことが挙げられます。
上記のような限界がありますが、利点が大きく優るため、骨粗鬆症診療では不可欠な検査となっています。問題点を認識した上でうまく運用することが重要です。
骨密度値は、単位面積(cm2)あたりの骨量(g)として算出されます(単位:g/cm2)。骨密度測定値の評価には、若年成人データ(腰椎の場合は20-44歳、大腿骨近位部の場合は20-29歳)との比較、同年齢データとの比較で評価します。
若年成人比較(%)とは、若年成人骨密度の平均値(Young Adult Mean : YAM)を100%として、骨密度を%表示する指標であり、同年齢比較(%)とは、同年齢の骨密度平均値を100%として比較した値(%)になります。
また標準偏差を参照した値にはTスコアとZスコアがあり、Tスコアとは、骨密度を若年成人平均値と比較し若年成人の標準偏差(SD値)で除した値、Zスコアとは、骨密度を被検者と同年齢の平均値と比較し、同年齢の標準偏差(SD値)で除した値です。原発性骨粗鬆症診断基準は若年成人平均値を基準としますので、 YAM%、 Tスコアを用います。Zスコアは同年齢と比較した値として意味を有することがあります(後述)。
DXA法の骨密度結果における臨床的有用性としては、原発性骨粗鬆症診断、治療開始の判定、骨折リスクの評価、骨粗鬆症治療薬投与後の効果判定が挙げられます。



骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン 2015年版も参照してください。
一方、非適用となる対象は、以下のような症例です。
9. 妊娠中
10. 造影剤投与後、核医学検査後
11. 装置の対過重を超える体重や適切に寝台に寝られない症例
なお、閉経前女性・50歳未満の男性でDXA測定が必要な症例において、その結果の評価は、以下のように考えることが示されています。
12. Tスコアの代わりに、Zスコアを用います。Zスコアが、-2.0以下であれば、同年齢層と比べて明らかに骨密度が低下していると判断します。
13. 50歳未満の男性では、骨粗鬆症の診断は骨密度測定のみで行うべきでなく、臨床的なリスク因子や、脆弱性骨折の既往などを考慮するべきです。
14. 測定部位について
DXA測定の推奨部位は、腰椎と、どちらかの大腿骨近位部の2部位です。
原発性骨粗鬆症の診断には、両者のYAM%もしくはTスコアの低い方で評価します。2部位を測定する理由としては、両者間には乖離が認められることがあること、腰椎骨密度は椎体骨折リスクを、大腿骨密度は大腿骨骨折リスクを最もよく反映すること、またモニタリング中に骨折や変形性脊椎症・関節症などを生じる可能性があること、などが挙げられます。
【腰椎骨密度測定】
15. 前後方向 L1-L4の各椎体にROIを設定し、L1-L4もしくはL2-L4部位の骨密度平均値を算出する。
16. 基本的に、肋骨の同定と腸骨稜を確認して、椎体レベルを決めます。そのほかに有用な手がかりは、最も長い横突起はL3であること、L1-L3の後方成分はU字型であるが、L4はX字型などが参考になる(図4)。
図4. 各椎体の有用な手がかり

17. 腰椎側面計測結果は診断に用いない。
18. 評価困難(局所変化、アーティファクトなど)の場合、その椎体は除外して評価する。
19. 1椎体のみの評価は行わない。
20. 解剖学的に異常な椎体は解析から除外する。
21. 除外した椎体以外を計測対象とし、Tスコアを求める。
22.Tスコアが、隣接する椎体より>1差があれば測定値として除外する。
【大腿骨近位部骨密度測定】
23. 大腿骨骨幹部軸と体軸が平行になるように測定する。
24. 股関節内旋・外旋は、骨密度に大きな影響を与える。小転子が小さく見えるのが適切な回旋である(図5)。小転子が大きく見えるのは外旋が強く、全く見えないのは内旋が強い。
図5. 大腿骨近位部

(A) 背側から見た大腿骨近位部 (B) 腹側から見た大腿骨近位部
頸部が最も正面にあり、広く見えるとき、小転子は小さく見える
出典:McMinn RMH, Hutchings RT, Pegington J, and Abrahams PH. 1993 Color atlas of human anatomy, 3rd ed by permission of Mosby International.
25. 頚部、近位全体を計測値として用いる。
26. 近位全体とは、頸部・転子部・骨幹部を合わせた領域を示す(図6)。
図6. 大腿骨近位部の領域

(A)大腿骨頸部 (B)Ward三角部 (C)転子部 (D)骨幹部
大腿骨近位部は(A)(C)(D)をあわせた領域
小転子が小さく見え、骨幹部がスキャン方向と平行になっている。
27. 頚部が診断に適切な部位であるが、近位全体のYAM%もしくはTスコアが低い場合には、近位全体の結果を用いる。
28. 経過観察には近位全体が適する。
29. ワード三角部は診断・経過観察いずれにも用いない。その理由は、領域が小さく再現性が不良。
また、もともと骨密度の低い部分で過剰診断となりうる。
30.左右いずれの測定でも問題はない。ただし、経過観察においては同側を測定する。
31. 橈骨測定の意味
橈骨は基本的には標準測定部位ではありませんが、腰椎・大腿骨骨密度測定が不可能なときに測定対象となります。たとえば、骨折、変形性脊椎症・関節症、強度側弯、術後(金属移植、置換術など)、過重体重、仰臥位が取れない場合が挙げられます。橈骨測定では、33%部位が測定対象とされます。UD(Ultra-Distal)や10%遠位部は、これまでの報告によると、骨折リスクの評価には使えない(骨折リスクと相関はない)との報告があり臨床的意義が低いとされています。
また、非利き腕を測定するのが基本です。ただし、血液透析患者では、シャントの影響で健常な血流ではないことが考えられ、骨代謝への影響が考えられるため、非シャント側を測定する。 過去に骨折を起こした場合では、非骨折側を測定することになります。
副甲状腺機能亢進症では皮質骨優位に変化が出現するため、橈骨33%部位が測定対象部位として最適となります。
解析領域内に存在する体外の金属(例:ポケットのコイン、下着の金属など)を認める場合は、それを除いて再測定してください。腸管内に残存したバリウムや異常に拡張した腸管ガス像が見られる場合、検査日を改めて再検査します。ベースライン関心領域内に存在している体内の石灰化のうち、(腎結石など)削除できるものは除いて解析します。顕著な大動脈石灰化などのように、計測したい部位と重なっており、その影響が無視できない場合は、その部位の測定値は使用できません。変形性脊椎症の場合、骨棘や変性部分のみを除外して解析するのは、再現性に支障を来しますので、変形の程度により、当該椎体を解析の対象から除く必要が生じます。
解析において、以下の項目はチェックが必要であり、不適切な場合は再解析を行う必要があります。 経過観察時には、ベースラインの画像や前回検査時の画像を参照することが重要です。
1. 軟部組織領域の設定が適切であるか?
軟部組織領域とは、骨密度値を算出する際に補正に使用する軟部組織の基本データであり、この領域のX線吸収量を基準(ベースライン)として、骨量を算出します。測定部位により、適切な軟部組織領域は異なり腰椎では、椎体の両外側の軟部組織で横突起部を外した領域、大腿骨では主に頚部上部、および下部となります。軟部組織領域は小さすぎると、正確な計測ができませんので、十分に確保することが重要です(図7)。しかし、広範囲まで測定領域を広げると、腰椎では肺野が含まれ、下方では仙骨が含まれると軟部組織領域の設定に影響が出るので注意を要します。適切に測定領域を決定することが必要です。
図7. 適切な軟部組織領域

2. Bone edgeが適切に設定されているか?
3. 腰椎計測において、椎間が適切に設定されているか?
4. 大腿骨頸部ROIは適切な部位にあるか?
(GEのDXA装置では、頸部の最狭部に自動的にROIが設定されます。)
坐骨に頸部ROIが重なると測定値に影響が出ますので、重なった部分のデータを削除する必があります(図8)。坐骨から外すためにROI幅を縮小すると十分軟部組織量が含まれなくなり、正確な計測に支障が生じます。通常は坐骨の部分を骨ポイントではなく、ニュートラルポイント(計算に使用しないポイント)として変更します。
図8. 頸部のROI box が坐骨に重なる場合

5. 大腿骨転子部のROIについて
GEのDXA装置では、スキャン横断面から45度に固定したラインで、転子部ROIを決めます。従って、大腿骨の傾きによって、転子部ROIの大きさが変わるため、GE装置では大腿骨軸を体軸と平行にすること(内転位、外転位を避ける)がより大切となります。
6. 経過観察において、Area値(骨計測領域)の変動が5%未満であるか?
5%以上の場合は原因を確認し、再解析を行うことが望ましいです
日本骨代謝学会は1995年にはじめて原発性骨粗鬆症の診断基準を発表し、1996年、2000年に改訂がなされました。さらに国際的な整合性を目指すとともに、新しい知見や臨床の実情に合致させるため2012年度改訂版が発表されました。
2012年度改訂版における改訂のポイントには、以下があげられます。
1. YAM%(70%)評価に加え、Tスコア(-2.5)評価を追加。
2. 腰椎部L2–L4部位に加え、L1–L4部位を追加(いずれの採用でもよいが、同一の被験者では統一する)。
3. 男性・女性ごとのYAM値として、腰椎(L1-L4, L2-L4)部と大腿骨(頸部, 近位全体)を表示。
4. 大腿骨のYAM値算出年齢を、これまでの20~44歳までの平均を20~29歳までの平均に変更。
腰椎では従来通り、20~44歳のまま。
5. 測定部位は原則として腰椎とどちらかの大腿骨とし、これらの測定が困難な場合は、橈骨、第二中指骨を計測。
6. X線像による骨粗鬆化の指標として使用されていた骨萎縮度判定は、デジタル方式のX線装置の普及により、行わない。
上記のように、大腿骨のYAM基準年齢を20~29歳データに変更したことに伴い、基準値が高くなったため、以前の基準値では骨粗鬆症領域にならなかったのに、2012年版では骨粗鬆症領域に入ってしまう症例が散見しているのには留意が必要です。基準値の変更が終了していない施設では、早めの対応が望まれます。
腰椎・大腿骨近位部のインプラント術後の症例では、たとえインプラントが解析部位にかかっていなくても隣接部位であれば、測定値に影響を及ぼす可能性があるため、基本的には骨粗鬆症診断には用いないようにします。また、測定結果の解釈が困難となります。椎体は1椎体のみで評価すべきでないですが、個々の椎体のデータに注目することも必要です。つまり、L1-4, L2-4全体を見て、1椎体が他椎体と比べて、1SD以上高値・低値であれば、何らかの病的状態が発生している可能性が考えられるからです。変形性脊椎症、骨棘、大理石病、骨転移、骨腫瘍などがその主なものである。
最後に
DXA法の骨密度測定は、臨床的にも有用な手法ですが、その限界や問題点などを理解し、日常の診療に活用したいものです。特にその結果は、数値として表示されるため、その数値の意味合いを理解し、被験者に正しく伝えることが必要です。数値の一人歩きは特に避けたいものです。
PRODIGY Fuga
医療機器認証番号:21500BZY00582000号
販売名称:X線骨密度測定装置 PRODIGY
PRODIGY FugaはenCORE SW V16.sp1以降のVersionを搭載する
左記医療機器のニックネームです。